サルの尻が赤いのも医者のせい

「医師常識欠落」発言を撤回=日医会長に陳謝−首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081120-00000132-jij-pol

さて、さっそく首相が発言を撤回した。まあ当然だろう。
今回問題となった発言につき、以前のニュース記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081119-00000020-maip-pol
より引用。まず

 麻生太郎首相は19日、首相官邸での全国都道府県知事会議で地方の医師不足への対応を問われ、「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医者の確保は大変だ。(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い。うちで何百人扱っているからよく分かる」と述べた。

…「お前が言うな」ってのはともかくとして、世間一般とは異なる常識をもった人が多い可能性もあるという点については必ずしも否定しない。ただ、逆に世間一般より良識的な範疇に属する人間も多いように思うが。
もっとも「社会的常識がかなり欠落して」いたがために奴隷のような労働にも耐えてきて、常識を知ったがために医療崩壊が進んでいるとも言える。医療崩壊には医師側のモチベーション低下も大いに関係しているのに、こんな士気を下げるようなKYな発言をしてるようじゃ駄目だよね。

しかしもっと問題にしたいのは、この発言。

 さらに首相は、「正直これだけ(医師不足が)激しくなれば、責任はお宅ら、お医者さんの話ではないのか。しかも、お医者さんを『減らせ減らせ、多すぎだ』と言ったのはどなたでしたか」と、過去の医師側の発言を紹介する形で医師を批判した。

…「はじめに医療費削減ありき」の方針に沿うように、かつて「将来の医師需給に関する検討委員会」にて医師が過剰になるかのような報告書を作ったのは旧厚生省の仕事。まあそんな報告書を信じて医師数削減に同意してしまった当時の日本医師会もぬるかったかも知れないのだが、医師の絶対数を不足させてしまったこと、過酷な科に進ませるインセンティブを用意しなかったのは当然、政府の責任だろう。

ちなみに上に挙げた報告書の中には「医師数は、過剰が明らかになった時点で急いで対策を講じても効果が得られない。」という一文がある。「過剰」をそのまま「不足」に置き換えても成立するし、現状がまさにそうなのだが(笑)。

いずれにせよ政府は「急いで対策を講じても効果が得られない」ことを噛み締めつつ、少しでもできることをやっていって欲しいものですな。まずは不足している医師を補うために、人的リソースでのサポートが必要。そのためには現在の医療費削減策を思い切って大きく転換することが必要だろう。


それにしても医師会長の

会談後、唐沢氏は記者団に「(首相には医師を)できるだけ励ましてもらいたい」と語った。 

って腰抜けコメントっぷりはどうよ。「診療報酬を上げないと、日本の医療は取り返しのつかないことになります」ぐらいビシっと言ってやらにゃ。もうなりつつあるけど。