報道ステーションより

一昨日の晩(寝落ちのためエントリのアップが遅くなってしまったのだ)の報ステで取り上げられていたが、「どのような急患も受け入れる」ことを25年間続けている病院があるという。柏市の名戸ケ谷(などがや)病院がそれだ。
番組内でのの取り上げ方は、ほぼ以下の記事同様。(おんなじ朝日だしね)
http://www.asahi.com/national/update/1106/TKY200811060132.html

ちなみにこの病院についてはNATROM先生のエントリ
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20081106
でも取り上げられていたが、番組によると産婦人科がないというのに妊婦でも受け入れるのだそうだ(!)。
さらに番組中では、「最近の医師は専門医重視で、専門外は診たがらない」「まず受け入れて診察することで正しい判断ができ、自分のところで手に負えなくても然るべき搬送先に転送できる」という点が強調されていた。

番組はこの名戸ケ谷病院の方針を、一方的に礼讃して終わる。まるで妊婦を受け入れられないのは、各病院の努力不足であり、搬送”拒否”の問題は医療機関側の問題で、それが解決されれば万事OKだと言わんばかりに、だ。


医師を多く配置することや、仕事環境の充実などという方法が効果的だということは否定しない。が、名戸ケ谷病院のやり方にデメリットがないかといえばさにあらず。医療者ならすぐにツッコミが浮かぶところだが、一般の方は番組内容をうのみにする恐れがあるので、一応指摘はしておきたい。

まず、「最近の医師は専門重視で、専門外は診たがらない」という話。まあ実際その通りではあるのだが、このことを以て医師のやる気がないかのように理解されてしまっては困る。ある程度の領域のオーバーラップはあるし、一般人よりかは正しい判断が下せるのは当たり前の話ではあるが、やはり専門家には及ばない。ひょっとしたら自分の誤った判断が致命的なことになる可能性もある。…というわけで、「生命に対する畏れ」ゆえに安易に診察できないという事情があることはご理解頂きたい。訴訟リスクというのももちろんあるのだが、それ以前の問題も存在する。

また、「まず受け入れて診察することで正しい判断ができ、自分のところで手に負えなくても然るべき搬送先に転送できる」という話。
「まず受け入れて診察することで正しい判断ができ」という点については、上で述べたような問題点が存在するとはいえ、そのメリットは必ずしも否定はできない。しかし「然るべき搬送先に転送できる」。…然るべき搬送先というものが十分にあるならその論法も成立するかも知れないけれど、医療が慢性的なキャパシティ不足に陥っている現状では「正しい診断が下されても搬送先が見つからない」という事態は十分に考えうる。さらには、「正しい診断が下されてしまったが故に、搬送先が見つからない」といった可能性もあるわけだし(より悪いシナリオが想定されてしまったら搬送先が限定されるのは当たり前)、また何より「搬送されてきてから診断がつくまでのタイムラグによるデメリット」については全く言及されていない。

結局のところ、名戸ケ谷病院のやり方を他の病院が真似ればうまく行くかといえば、そうではない。問題の根本的な解決のためには、医療におけるキャパシティ不足を何とかしなければならない。


…とか言ってたら、二階俊博経産大臣の 「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」とかいいう寝言ですよ。
http://jp.youtube.com/watch?v=jgqbb0IM9SQ
竹やりでB29が墜とせると言わんばかりの周回遅れの暴言だが、すでにこの発言を受けて現場をリタイアするだの不穏な動きも出て来ている模様。
以下、天漢日乗さまのエントリ。
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2008/11/2-d63b.html
別に2chのカキコでなくても、こうした声は知り合いからも耳にする。
いやもう国民が骨身にしみて理解するためには、「再生のための崩壊」でいい気がします。