ヘイトと誠実さ

id:yasugoro_2012さんにブクマでご質問頂いた件のお返事と、それに関連して考えたこと。ちょっと長くなるのでエントリにした。何とまあ、1年半ぶりのエントリである。


事のあらましとしてはid:scopedogさんのエントリ
トイレのドアを開けっ放しにして排便中の人に「ドアは常にオープンだ」とか言われてもねぇ
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140207/1391705836魚拓
に対して自分が「批判は存分にすればよいが、持病と引っ掛けての揶揄は醜悪の極み。ネトウヨヘイトスピーチとどこが違うのか。主旨に賛同すればこそ、こんなのは批判すべき。」とブクマし、それに対してyasugoro_2012さんから「どの部分から『持病を揶揄している』と断定」したのかとご質問頂いたという流れ。

まず「『持病を揶揄している』と断定」した理由について。
直接的に断定できる根拠はないけれど安倍首相がIBDを患っているのは周知の事実であるし、エントリ全体の内容からはそう判断した。個人的にはなるべく安易に断言することは避けたいとは思っているものの、ブクマやツイートでは字数的に留保表現を加える余裕がない場合もある。ただ今回の件では、その留保を付け加える必要があったとは思っていないけれど。
また確かに断言できる明文化された根拠はないとは言え、メタブクマや以下で述べるエントリなどを見る限り、自分がブクマで指摘したことは事実だったと判断して差し支えないだろう。

なおid:festerfesterさんからの批判ブクマに対し、scopedogさんは
「批判は揶揄、侮蔑、悪罵、冷笑を使わずにやってくれ(ただし自分は例外)」って人が多すぎる
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140210/1392052195魚拓
と言う反論エントリを書いている。

確かにfesterfesterさんのブクマで批判されているのは「揶揄、侮蔑、悪罵、冷笑」であるが、もっと批判されるべきは身体的特徴や病気、人種や国籍などといった、自分で変えがたい属性を絡めた揶揄などであろう。手前味噌にはなるが自分のブクマに付けて頂いたスターからもそのことは見て取ることができるし、そもそも思想の左右、保守やリベラルを問わず、文明人なら持っておくべき共通認識だと思っている。しかしその肝心な点から目を背けた反論エントリしか書けないのは、とうてい論者として誠実とは言い難い。

一方、先述の通り病気と絡めた揶揄だという直接的な証拠はないと言わざるを得ないわけであるが、風刺や揶揄は直接的な表現を用いないのがスマートという考え方もあるだろう。そのこと自体には自分も同意するし、エクスキューズの余地を残そうとしたわけではなく単にスマートさを求めたという可能性も完全に否定はできない。しかし元エントリは比喩としても嫌悪感を催させるし、スマートとは程遠いと感じる。さらに反論エントリの中で「IBD特有の症状を書いてはいないと思いますが」という逃げを打っていることについては、乾いた笑いしか出ないと言うのが正直なところだ。

個人的にこのあたりの考え方としては、yasugoro_2012さんのエントリ
ちょっとした屁理屈
http://d.hatena.ne.jp/yasugoro_2012/20140212/1392224406
にはほぼ同意する。過去に自分がそういう発言を全くしていないかと言われれば心許ない気もする(というか多分あるだろう)が、少なくとも現時点ではだいたい同様の認識でいるつもりだ。…個人的には最初の例示については実例を見ていないので何ともだが、やや基準が厳しすぎるかも知れないとは思うけれど。


いわゆるネトウヨ歴史修正主義者などが批判される理由、批判する根拠にはその思想そのものもさることながら、弱者に対する冷淡な態度や差別主義・ヘイトであったり、事実に向き合えない・あるいはないがしろにする不誠実さ、論理性のなさもあると思う。しかし今回の一連の話を考えるに、後に挙げたこれらの特徴はscopedogさんにも当てはまると言わざるを得ない。右にも左にも困った人はいるし、声を大きくしようと思って表現が先鋭化しがちなのもよくある話だけれど、こういうダブルスタンダードを自分に許してしまった時点で論者たる資格を失うのではないだろうか。

scopedogさんがこの手の指摘を受けるのも初めてではないようだし、自分自身が気になったことも何回かあるけれど、今回はあまりに目に余ったのでエントリとさせて頂いた。書かれる内容そのものは見るべき点も多いと思うだけに、残念である。