「医療事故調査委員会」試案を考える

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080403-00000152-mai-pol

<医療事故調>「やむを得ぬ死」届け出除外 厚労省最終試案
4月3日22時21分配信 毎日新聞
 厚生労働省は3日、医療死亡事故の原因を究明する第三者機関として10年度設置を目指している「医療安全調査委員会(仮称)」の最終試案を公表した。調査対象とする事故の範囲は「医療過誤か、合理的説明がつかない死亡」に限定し、死亡の危険を伴う正当な医療行為による事故などを除外した。医療機関は調査委への通報が義務化される代わりに、医師法改正により警察への通報義務が不要になる。

 厚労省は試案についての一般からの意見を募り、法案を今国会にも提出する。

 調査委は、国土交通省に置かれた航空・鉄道事故調査委員会の医療版で、医療関係者や法律家らで構成する。これまで刑事・民事裁判に委ねられていた真相解明を専門家が担い、再発防止に役立てる狙いがある。国は訴訟リスクが減ることで、医師不足対策の効果もあると期待している。

 届け出の範囲は、医療関係者らに「過失がない死亡事故まで調査対象になると医療が萎縮(いしゅく)する」との声が強いのを受け、対象を絞った。厚労省の例示では▽内視鏡検査で消化管に穴を開けてしまう▽手術で癒着した組織をはがす際に大出血を起こす−−などのケースは「やむを得ず発生した合併症」とみなし、届け出の必要はない。厚労省は年間2000〜3000件が調査対象になると推計する。

 医療機関からの届け出や、遺族からの調査依頼があると、調査委は医療や法律家のほか、患者側代表として有識者も入る調査チームを事案ごとに設置。チームには立ち入り検査の権限を与える。遺体の解剖が原則だが、既に火葬した場合も調査する場合がある。

 調査の過程で▽故意や重大な過失▽過失事故の繰り返し▽カルテの改ざん、隠ぺい−−などが判明した場合は、調査委が警察に通知する。警察は遺族の告訴を受けた場合でも、原則的に調査委の結論を待って捜査に入る。【清水健二】
最終更新:4月3日22時21分

個人的にはあまりに悪質なミス、あるいは故意による医療事故は何らかの処分を受けても然るべきとは思っている。 しかし福島・大野病院の癒着胎盤による妊婦死亡で医師が逮捕された件は「ミスもないのに結果が悪ければ逮捕」と医師たちに感じられているし、医療崩壊を進める大きな原動力となった。
医療知識のない検察の暴走が福島の件の原因であるが、「医療事故調査委員会」の設立がいま検討中である。医療事故を専門家の手により医学的に正しく調査・判断し、過失の有無をはっきりさせるというもの。正しい判断がなされること自体は、医療側としても歓迎すべきところ。
しかし現在検討されている「医療事故調査委員会」における刑事手続きは、捜査機関が事故調の決定に従うことが義務付けられているわけではない。あくまで捜査機関は「謙抑的な対応」をすべきとされているだけで、これは何と現在の法規定と変わらないもの。これでは、福島のような検察の暴走を止められない。
Yosyan先生のところで詳しく論じてあります)

また逮捕という刑事事件も大問題であるが、「民事訴訟」の件数は刑事よりはるかに多く、トンデモ訴訟の頻度も高く多くの医師を恐れさせている。しかし現在検討されている事故調はあくまで刑事についてのものであり、民事についてはまったくスルー。
厳しい現実を受け止められず、病院や医師のせいにしたくなる患者感情も理解できないわけではない。しかし医学的には難癖としか思えず、2chあたりで「死体換金訴訟」と揶揄されているようなものであっても、新しい制度ができたとしてもこれまでと全く変わらず訴え放題。これでは、医療の崩壊を防げない。
正当なものであれば、訴訟という舞台に立たされること自体は仕方がないかも知れない。しかし難癖のような訴訟は脅威だし、医学的に正しくない判決が下り敗訴してしまう可能性もあるとなれば恐怖そのもの。
現場から逃げ出すのを止めるためには、民事訴訟であっても事故調査委員会の結論に従うという規定が必要だろう。
(この件についてもYosyan先生のところへ参考リンク)

この問題について、厚労省パブリックコメントを募集しているとのこと。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080001&OBJCD=&GROUP=
(以下、上記URLの募集要項より抜粋)

4 意見の提出方法等
個人のご意見の場合は【様式1】、法人・団体のご意見の場合は【様式2】に記入し、次のいずれかの方法により提出してください。なお、いただいたご意見に対し個別の回答はいたしかねますのでご了承ください。
(1)電子メールを利用する場合
電子メールアドレス:IRYOUANZEN@mhlw.go.jp 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて
※ 送信する電子メールの件名は「第三次試案に対する意見について」としてください。
※ ご意見の提出は、【様式1】又は【様式2】の電子ファイルをメールに添付して提出してください。(ファイル形式は、テキストファイル、マイクロソフトWordファイル、ジャストシステム一太郎ファイル又はPDFファイルのいずれでも構いません。)
※ 容量が5MBを超える場合は、ファイルを分割する等した上で提出してください。
(2)郵送する場合
〒100−8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて
(3)FAXを利用する場合
FAX番号:03-3501-2048
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室 あて
※ 照会先窓口(03-5253-1111(内線:2580、2579))に電話連絡後、送信してください。

上記URLより様式1をダウンロードして、上記メルアドへ添付ファイルとして送付すればいいようです。
崩壊に心を痛めている貴方、ちょっと考えてみませんか。