ふたつのホームゲレンデ

連日報道されていた恐羅漢の遭難であるが、まずは無事で発見されて何よりだ。

実はここ、以前ホームゲレンデにしていたところ。山椒は小粒で…というか、規模の割には面白い斜面があり楽しいんだよね。アクセス路が劣悪で、道沿いの川に落っこちているクルマをたびたび見かけたりするなど、中国地方にありながら秘境的な面もある。

リフト下など一部に滑走禁止区域はあるがコース管理は割とゆるめで、ちょっとしたツリーランも割と簡単に楽しめたりする。キッカーも作り放題(というか放任?)。 今回のように山頂方面に向かうバックカントリーな方々も時々見かけるし、プチニセコと言ったらかなり言い過ぎだが、割と自由な感じのスキー場。


さて、昨年までホームにしていたもうひとつのゲレンデがある(敢えて名は伏す)。
高速のICから5分ほど、週末はオールナイト営業、人工雪で雪の心配なし…といったコンビニ的な要素に加え、コース管理は本っ当にガッチガチである。コースの脇はどこを見ても柵、柵、柵。 大げさに言えば、滑っていてもベルトコンベアの上の部品のような気がしてくるというか。あるいはスキー型テーマパークと言えばいいのか。

別にコース外に積極的に出たい訳でもないが、スキーにおいて「自然の中での開放感」というのは大事だと思うのに、まるで室内ゲレンデでも滑っているかのような開放感のなさ、人工的感覚である。「滑っている」という事実以上に得るものはないので、個人的には練習用と割り切って週末ナイターのみ利用していた。


さて今回の件であるが、ビーコン・無線はおろか、綿のパーカーを(まさかアウターとして?)着ていたりするメンバーもいるという体たらく。山屋ではない自分から見ても突っ込みどころは満載である。

とはいえ今回の遭難騒ぎはスキー場管理区域外におけるものであり、滑走禁止区域というわけではない。あくまで登山の延長であり、ゲレンデ滑走の延長ではない(当人たちの意識は後者に近かったかも知れないが)。

「指示に従わなかったからダメ」なのではなく「(色々な面で)力不足だったからダメ」なのである。言い方を変えれば、スキー場の管理の問題というよりはむしろ、当人たち自身の問題。

今回の件を機に恐羅漢スキー場が山頂立ち入り禁止など規制を強める方向に向かうとすれば、それは不幸なことだと個人的には考える。もとよりスキー、登山などのスポーツ自体が、本来は自己責任であるからだ。

これだけ今回の件が連日報道された上で、なおかつ不十分な力量・装備でコース外に立ち入ってしまうアレな人間がいるとはあまり考えたくないのだが、看板や放送などで注意を喚起するという程度に留めてほしいものである。ただ規制、規制では窮屈であるし発展性もない。
日本語の読めないサルもいるようなのでフールプルーフという考え方も理解するし、あくまで理想は理想であり難しいのは承知の上ではあるのだが。

安易な自由は、やがて不自由を招く。
戒めたいところである。