ゼロサムゲームと分断統治

もとより低く抑えられている日本の医療費のこと。開業医とて、一般的なイメージほどに楽で儲かる稼業ではない。
ゼロサムゲームよろしく「開業医の再診料を引き下げた分を、勤務医の待遇改善に向ける」などという姑息的な対策を行うのではなく、医療費全体の増額(それも大幅な)を考えねばならない時期に来ているのは明らか。

実際のところ政府が恐れているのは、開業医と勤務医が団結して総額での医療費の増額を求めることではないか。「医師会の反対」により開業医の再診料引き下げを見送るというのは、政府にとっても勤務医に対する体のよい言い訳であると同時に、勤務医と開業医を分断する格好のネタ。

今や昔のような力はない医師会が、少なくとも開業医の利益だけは死守せんと頑張るほどに、医師同士の対立が強まる構図。

勤務医と開業医は”分断されて統治”されているというのは、本田宏先生も「全国医師連盟準備委員会 総決起集会」での講演で強調されていたこと。
勤務医・開業医。お互いの立場を真に理解して行動していくことが、医療崩壊が規定路線になりつつある現在に求められることと感じる。

開業医の再診料引き下げ、見送りの方針
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080130-00000015-yom-pol
 厚生労働省は、2008年度診療報酬改定で、焦点となっていた開業医の診療所の再診料引き下げを見送る方針を固めた。

 開業医の影響力が強い日本医師会(日医)が強硬に反対し、与党も日医の意向を尊重する方向となったためだ。来年度改定では、医師不足が深刻化している勤務医の待遇改善策として約1500億円を盛り込む方針だ。財源については、再診料引き下げ分に代わって、簡単な診察の際にかかる「外来管理加算」の引き下げ分などで補う方針だ。

 再診料は、2回目以降の診療にかかる費用で、診療所(病床数20未満)は710円だが、病院(病床数20以上200未満)は570円と、診療所の方が140円高い。これは「地域の医療を支える診療所の方が病院よりも診療報酬上では重視されてきた」(厚労省)ためだ。

 だが、患者の「病院志向」の高まりで、病院と診療所の役割分担はあいまいになっており、「再診料に差がある理由がわかりにくい」との指摘が出ていた。このため、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会中医協)が18日示した来年度改定の骨子は、「病院と診療所の格差是正について、検討する」と明記し、同一価格とする方向で調整していた。

 だが、開業医の収入減に直結する再診料の引き下げについて、日医は一貫して反対を表明し、与党も「学校健診など、開業医が果たす役割は大きい」として、日医との非公式協議で引き下げを見送る方針を固めた。
(2008年1月30日 読売新聞)