駅伝と医療崩壊

5か所拒否で搬送1時間、衝突バイクの男性間もなく死亡
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080103-00000113-yom-soci
1月4日0時21分配信 読売新聞
 2日午後10時20分ごろ、大阪府東大阪市東鴻池町1の市道で、同府大東市灰塚のトラック運転手西村正夫さん(49)のミニバイクが転倒し、軽乗用車に衝突した。
 119番通報で到着した大東市消防本部の救急車は、府内の救命救急センター5か所に受け入れを拒否され、約1時間後、現場から北西15キロの府済生会千里病院(吹田市)に併設の千里救命救急センターに搬送した。
 西村さんは事故当初、重傷と判断され、意識もあったが、3日午前1時40分ごろ、大動脈損傷で死亡した。
 府警河内署によると、西村さんは胸の骨を折るなどしていたとみられる。事故直後、署員に「大丈夫」と話していたといい、容体が急変したとみられる。
最終更新:1月4日0時21分

医療崩壊とかけて駅伝と解く、その心は…というわけで。
なぜか、駅伝やマラソン大好きな日本人。することが少ない正月とはいえ、テレビに張り付いていた人も少なくないことだろう。考えてみるに、長距離走がウケる根底にあるのはやはり「精神論大好き」な国民性。

さて医療現場はといえば書き飽きた話だが、先進国中最低レベルの人口当たり医師数、最低レベルの医療費。そういった数字の上での側面はもちろんの前提条件というか、そちらの方が主原因ではあるのだが。
それでも「精神論大好き」な国民性が医療に対して過度の期待を抱き、追い詰めてきたのは間違いないと思う。逆に医療側も「もうちょっと頑張れば」と何とかやってきたのが、傷を深いものとした。

受け入れ「拒否」もなにも、実際は「不可能」な訳で。「ベッドがなくても…」だの「とりあえず診るだけでも…」だの「命を扱っている自覚が足らない」だのといった精神論には、正直もうお腹いっぱいです。

手が空いていなかったり対応能力がないのに受け入れれば救えない場合ももちろんあるし、いったん受け入れたが手に負えず他に搬送ということとなれば大きなタイムロスが生じる。
そういう「受け入れる方が無責任」という場合もあることを、どれだけの人が理解しているだろうか。
この問題の根底にあるのは「キャパ不足」である。

いずれにせよこうした件で病院や医師個人を責めるのは全くお門違いで、医師不足を招いた国こそ責められるべき
大衆に迎合して不当な医療バッシングを繰り返し医師たちの心を折ってしまったマスコミ、トンデモ訴訟で医師たちを戦々恐々とさせた裁判所・検察、そしてもちろん”無知な大衆”そのものも。

当面の対策としては医学部定員増に転じてはいる。しかし実際の戦力になるのが10数年後ということを考えればそれのみでは不十分で、急場をしのぐには「少ない戦力を有効に使う」ことが不可欠。

2006年のデータでは病院の43%が赤字で、特に「自治体立」では実に全体の92.73%(05年度は89.28%)に達しているほか、「国立」69.29%(同66.14%)、「公的」58.90%(同45.89%)となっている。この赤字の現況となっている低い診療報酬を引き上げて、医師以外の追加人員を雇い入れる余裕を与え、医療以外の雑務も多い医師の過重労働を分散しなければ崩壊は不可避だろう。