足りぬ足りぬは

まあ一応、月イチぐらいはエントリを書いておくということで。
(本当はあまりの燃料満載ぶりに辟易していたと言うのが実情だが)

勤務医9割、事務が重荷…全社連調査
「医療事務員の導入急務」

 病院勤務医の約9割は、本来の診察以外の事務作業の多さに負担を感じていることが、全国の社会保険病院の常勤医を対象にした調査で分かった。

 中でも、大きな負担となっているのは、診断書や紹介状などの書類作成、電子カルテのデータ入力といった作業。調査を行った全国社会保険協会連合会(東京)は、「医師が本来の業務に専念出来ずに疲弊している。欧米などで導入されている医療クラーク(事務員)の活用など、業務分担が急務だ」と指摘している。

 調査は今年8月、全国52の社会保険病院のうち、250床以上を中心とした31病院の常勤医1406人にアンケート方式で行い、931人から回答を得た。

 4年前と今とで負担の増減を診療と診療以外に分けて聞いたところ、「両方増加した」と回答した人が58%に上った。「診療以外の業務のみ増加」も合わせると、診療以外の業務の負担増を感じている人が約9割に達していることになる。

 診療以外の業務を14種に分けて負担感を尋ねたところ、「大変負担」「負担」とする回答が多いのは、〈1〉民間の医療保険書類の記入(70%)〈2〉薬や検査などを指示する伝票整理(61%)〈3〉診断書(60%)〈4〉他病院への紹介状(59%)〈5〉患者・家族への説明(54%)の順だった。医療保険書類や診断書は患者側から作成を依頼されることが多い。

 これらの業務のうち、「事務職や看護師など、他職種に分担してもらえる」という回答が7割を超えたのは、〈1〉伝票整理〈2〉検査や処置の予約〈3〉民間保険書類の記入など。逆に、「すべて医師が行うべきだ」との回答が多かったのは、カルテ記載や患者・家族への説明などだった。本来医師の業務ではない業務がどの程度あるか聞いたところ、約4割が「10〜20%」と答えた。

 自由回答欄では、「最近、診断書や紹介状などの作成依頼が増加。ささいなことまで説明書、承諾書などの書類が必要になった」「IT化でコンピューター入力業務が増え、予約まで医師が取っている」などの意見が多く聞かれた。

 医療クラーク 医師の仕事を補助する事務職員で、医師が診察に専念できるようにするのが役目。国家資格はないが、一定の医療知識や事務処理能力が求められる。欧米の病院では一般的だが、日本で導入している病院はまだ少ない。国は来年度から医療クラーク制度を導入する方針で、診療報酬改定で人件費がつく見通し。
(2007年12月27日 読売新聞)

医師不足、それに伴う過重労働についての話はもういいだろう。
ちなみに上のニュースで太字にした部分。”たった”「10〜20%」の「本来医師の業務ではない業務」が「大変負担」「負担」とされるあたりも、現場の過重労働を暗に物語ってますな。

さて医学部定員はやっと増員されたようだが、卒業するのは6年後。戦力となるのはさらに何年もあとの話。医師の卵が増えてもまずは今いる少数の医師の負担を減らして有効に使う」ことを考えなければ、肝心の技術を教えてくれる中堅以上の医師がその卒業までにいなくなってしまうだろう。
結果として現場には「親鳥を失ったヒナ大量発生」ということになり、技術の伝達が途切れかねない。それを防ぐためには、「現場から医師が逃げ出す現状」をどうにかするしかない。

このニュースでも指摘されているように、医師でなくてもできる雑用を他の人員に回すということはギリギリの現場にとって効果的な策だろう。
しかし2006年のデータでは病院の43%が赤字で、特に「自治体立」では実に全体の92.73%(05年度は89.28%)に達しているほか、「国立」69.29%(同66.14%)、「公的」58.90%(同45.89%)となっている惨状。
さらに人員を雇い入れるだけの余力がある病院は、いったいどれほどあるのか?

それでも現政府は医療の値段(=病院の収入)である「診療報酬」をさらに引き下げている。政府の方針はあまりに周回遅れ感が強い(最近ニュースになった「引き上げ」は一部のみの話で、全体としては引き下げ)。
医療崩壊を防ぐにはここ数年が正念場といえると思う(もう止まらないだろうというのが本音ではある)が、急場をしのぐ意味、あるいは崩壊を最小限に留めるためにも診療報酬の引き上げを検討すべきだろう。