2ばーい2ばーい

乳児死亡率、都道府県で2倍の格差
(読売新聞 - 09月12日 08:07)
 都道府県別の乳児(1歳未満)の死亡率に、2倍以上の格差があることが、小児医療についての総務省の行政評価で明らかとなった。
 夜間や休日の小児救急医療の提供体制も全国の約4割の小児救急医療圏で未整備となっている。政府は2009年度までに、全国すべての医療圏で24時間体制の小児救急医療を提供することを目標としているが、総務省は12日、現状では達成が困難だとして厚労省に対応策をとるよう勧告する。
 総務省の調査では、05年の1000人あたりの乳児死亡率は、最も高い滋賀県が3・5人だったのに対し、最も低い佐賀県は1・7人だった。栃木県では、96〜05年まで10年連続で、全国平均を上回っていた。

都道府県の間で乳児(1歳未満)の死亡率に2倍の開きがあるという、センセーショナルなニュース。率が最も低い佐賀県は1.7人最も高い滋賀県が3.5人約2倍の開きがあるという。
さてここで、世界の乳児死亡率のランキング
2000-2005年の間で193カ国中の死亡率を順位にしたものを、以下に抜粋。

順位 国名 1000人あたり死亡数 
1 シエラレオネ 165.0
−−中略−−
182 スイス 4.0
182 ドイツ 4.0
182 ノルウェー 4.0
182 フィンランド 4.0
182 フランス 4.0
182 ベルギー 4.0
182 韓国 4.0
182 香港 4.0
190 アイスランド 3.0
190 シンガポール 3.0
190 スウェーデン 3.0
190 日本 3.0

…まずはシエラレオネに生まれなかったことを感謝したい。190位はアイスランドシンガポールスウェーデンと並んで死亡率の低さで同率トップということになるが、さてその死亡率は1000人あたり3.0人。なおリンク先を見れば分かるが、1980年から日本が死亡率の低さトップを保ち続けているのにも注目したい。

さて、高いと問題にされていた滋賀県のデータは…3.5人。滋賀のデータは2005年の1年のみで、先に挙げたデータは6年間の統計という違いはあるものの、全国平均と0.5人しか違わない。
なお2005年の全国の死亡率は2.8人で6年間の中ではやや低いようだが、それでも最も高い死亡率である滋賀県との差は0.7人である。
1年間の統計より、6年間の統計のほうがより信頼できるのは当然。2005年はわずかながら「たまたま良かった」部類であるが、6年間の全国平均とはほとんど差がない。上のデータは、むしろわが国の乳児死亡率のばらつきの無さを示しているんじゃないだろうか。
逆に言えばもっとも低いとされる佐賀県と2005年の全国平均との差は1.1人で、これは滋賀と全国の差より大きい。素直に統計を読めば、滋賀の死亡率が高いというよりは佐賀の死亡率が(といってもわずかな差だが)低いという話に過ぎないと思うのだが。 こういった事例を大げさに書き立てるのはマスコミの十八番のようなもので、いたずらに不安を煽る報道姿勢にはいつもながら疑問が残る。

ちなみにこの件についての総務省の資料がある。5ページ目より抜粋すると、

・乳児および新生児の死亡率の高さが常態化している都道府県が8県
そのうち、原因分析等を行っていないものが4県。原因分析を行っている4県中3県では、原因分析結果に基づく所要の改善措置が講じられ、乳児や新生児の死亡率が改善
厚生労働省はこれらの原因分析などを未実施

とある。
こういう、明らかな県や厚生労働省の怠慢をこそ問題にすべきではないか。「新生児死亡率に2倍の格差、厚生労働省は放置」なんて、いい見出しだと思うけれど。