錬医術。

寄付3千万円で医師2人派遣、兵庫県が鳥取大医学部に依頼
9月4日9時9分配信 読売新聞
 医師不足が深刻な兵庫県養父市の公立八鹿(ようか)病院(約420床)に、医師2人を派遣してもらうため、兵庫県鳥取大医学部(鳥取県米子市)に研究費名目で3000万円を寄付することがわかった。
 総務省によると、長崎県などが地元の国立大に寄付して医師派遣を受けたケースはあるが、県境を超えた派遣は異例という。兵庫県は「へき地の医師不足に悩む自治体のモデルケースになる」としており、新たな医師確保策として注目されそうだ。
 八鹿病院は、養父市香美町が作る組合が運営する但馬地域の中核病院。しかし、県内の医大医師不足を理由に派遣医師を引き揚げ、2004年に52人いた医師は43人に減少し、お産の取り扱いもできなくなる事態に陥りそうになった。

かつてマスコミは医局制度を大いに叩いたし、新臨床研修制度が開始されたこともあり、医局制度は弱体化した。しかし医局の負の面はあるにせよ、僻地における医師の確保、バランスの取れた専門性を持った医師の育成などの面から考えれば優れた制度だったというのは以前のエントリで書いた通り(文体が違うのはご愛嬌)。
当然の帰結として、僻地では医師の確保が困難となる。

「札びらで頬を叩く」のがモデルケースだとは、誠に本質が理解できていない話。聖地・尾鷲に年棒5000万で赴任した産婦人科医は1年で辞めたが、その理由は年休2日という過酷な労働体制に加え、議会や住民などの無理解で心を折られたことも大きいという。
ましてこの件、医師個人ではなく大学への寄付というのがミソ。地方自治体として背に腹は代えられない事情も分かるのだが、「大学への寄付で医師個人に負担を強いる」のなら、医局離れは更に進むことだろう。

カネというものは、所詮なにかの対価でしかない。砂漠ではカネより水が貴重だとよく言われる。カネで医師を呼ぶことはできても限りはあるし、「カネが医師を生む」わけではない。
医師の雑用サポートなど、「医師という不足している資源を有効に使う」視点がなければ全国的・絶対的な医師不足は乗り切れないだろう。そのためには医師以外のマンパワーも必要となるが、診療報酬が切り詰められ公立病院の6割が赤字といわれる中、それだけの余裕がある病院がいったいどれほどあるだろうか?
いま医学部の定員を増やしても、卒業して一人前になるのは学生の6年+10年ほど。その間に日本の医療が取り返しのつかない状態になる前に、医学部増員だけではなく医療費削減の方針を見直すべきだ。
マスコミによる不当な医療叩き報道と、それにより作られた医療不信(Atsullow-s caffee先生の「さあ 立ち上がろうー「美しい日本」にふさわしい外科医とは」より)を減らすのは言わずもがな、である。