宝の山

本日の記事。

レセプト情報の活用…「宝の山」を分析 医療の質向上へ
 医療機関が保険者に医療費を請求する際に使われる診療報酬明細書(レセプト)を、医療費の分析や医療サービス向上に活用しようと、厚生労働省が検討を始めました。

 レセプトは、患者の名前や病名、受けた医療処置や処方された薬を記したものです。病気ごとの医療費などが細かく分かるため、「医療情報の宝庫」と言われます。

 政府がレセプト情報に着目した理由の一つが、2008年度から策定される医療費適正化計画です。生活習慣病の患者や予備群、平均在院日数などの削減目標値を盛り込んだ計画を都道府県ごとに作るとともに、目標の達成状況を評価し、医療費が抑制されているかなどを調べます。

 生活習慣病の場合、健康診査で予備群を探し出し、保健指導を行いますが、それらのデータだけでは、本当に医療費が抑制されているのかがわかりません。予備群のレセプト情報を収集し、糖尿病の通院状況を調べれば、医療費の減り具合などがわかるわけです。

 さらに、過剰に投与されるケースが多いとされる抗生物質などの薬剤も、医療機関ごとの使用状況がつぶさに分析できるため、適正化を図れます。医療の質の向上にもつながるわけです。

 課題は、プライバシーの保護です。レセプト情報には、病気などの高度な個人情報が含まれます。厚生労働省は、個人が特定できないようにレセプト情報を匿名化する方針ですが、データ漏出や悪用などの懸念もあります。

 また、レセプト情報を活用するための基盤整備も遅れています。政府は2010年度末までに、医療機関保険薬局のすべてのレセプトを電子化し、原則、オンライン請求に移行する方針ですが、電子化されているレセプトの割合は、今年6月現在で36・9%に過ぎません。費用がかかることが一因ですが、「電子化で医療費の審査が厳しくなる」といった懸念が医療機関にあるためです。

 韓国などではすでに、レセプト情報を一元的に管理し、医療政策の立案や評価に役立てています。日本も、個人情報保護に万全を期し、「宝の山」を医療の質向上に活用するべきでしょう。(阿部文彦)

レセプト(診療報酬)情報を一元化し検討することで、医療の質の向上、適正化が図れますよという記事。
レセプトと言えば、医療行為の収支そのもの。「病名」と、それに対する医療行為の適否を対応させるものであり、医療機関の生命線ともいえる。それを検討することによる医療の「適正化」は?と問われれば、過剰部分を削減したり、不足部分に手厚く報いたりということが考えられるだろう。
ところが上の文章のどこを読んでも、「適正化」において不足部分を充足させるという話は微塵も出てこない。

レセプト情報の活用、ひいてはオンライン化においての厚生労働省の狙いははっきりしている。医療費の「削減」これ一本である。そのことを念頭において読めば、上の文章がどのような狙いで書かれたかは明らかというものだ(あるいは筆者がただ不勉強なだけかも知れないが)。

WHOの認める世界最高レベルの医療(ry
先進国中で最低に近い医療費(ry

といった事実が世間にも認知されつつあるこのご時勢。また厚生労働省が削りに削っている診療報酬点数のために多くの病院が赤字にあえいでいるという状況下で、時代錯誤というよりほかはない。まあ提灯記事とは、こういうことなのだろう。

ついでに言えば、レセプト情報の一元化に不可欠といえるオンライン化の弊害の話。
最低でも導入コストは300万円もかかるというし、それに対する報酬といえば「電子化加算:3点(=30円)」のみ。元を取ろうと思えば延べ10万人に対する医療行為が必要。
med先生の「勤務医 開業つれづれ日記」からの情報によると、京都府ではオンライン化に伴い60歳以上の開業医の実に3割が廃業を検討しているとのこと。高価なイニシャルコストに加えて不慣れなPC操作などなど無理もない話だが、医師不足が言われる昨今こちらも時代錯誤な話。

ところでレセプト情報を一元化したとして、その情報は各医療機関に公表してもらえるのだろうか?「医療の質の向上」をうたうからして、ぜひ大々的に公開してほしいものだ。
過剰部分を削るのに役立つのはもちろん、「低い診療報酬のためにどう努力してもダメ」な不採算部門を切り捨てるのにも極めて有用だろうから。