Destroying Angel

今日はキノコのお話。

損賠訴訟:久慈病院で「中毒見逃し妻死亡」 遺族が県を提訴 /岩手
 洋野町の女性(当時67歳)が急性肝不全で死亡したのは医師が適切な措置を怠ったためだとして、女性の夫(71)ら遺族4人が22日までに、県立久慈病院を管理する県を相手に、慰謝料など約4630万円を支払うよう求める訴訟を盛岡地裁に起こした。
 訴状によると、女性は05年10月6日、採取したドクツルタケをツルタケと思って食事。吐き気、おう吐に襲われたため、約16時間後に同病院救急外来を受診し、点滴を受けて帰宅した。翌日も同病院の消化器外来で受診、容態が悪化して入院。同11日に転院先の盛岡市の岩手医大で、ドクツルタケ中毒を原因とする急性肝不全で死亡した。
 遺族側は「初診時に摂食歴を説明しており、遅くとも同7日にはドクツルタケ中毒を疑い必要な治療をすべきだった」と主張している。
 女性の夫は「病院に行っても満足な説明を受けられなかった。女房の命は戻らないが、何が問題だったのか真実を知りたい」と話している。
 県医療局は「裁判を通じて事実が解明されるものと考えております」と話した。【山口圭一】
毎日新聞 2007年5月23日

ドクツルタケと言えば、英語では"Destroying Angel";死の天使との異名をとるほどの猛毒キノコ。毒キノコによる国内の死亡例の約半分を占める
なお(財)日本中毒情報センターホームページによると、キノコ1本で致死量に相当するとか。治療法としてはPCGやチオクト酸の投与などが行われているが、確立されていないというのが実情の模様。

このキノコが危険なのは、毒性の強さに加えて症状の出方がトリッキーらしい。一般の方のページだが、見る採る食べる!キノコ天国北海道様にて分かりやすく書いてある。適宣引用すると
さらに、このキノコの恐ろしいのところは、
「ダブルフェイント」を使うことなのね。

食べてから、発症までに、
6〜10時間くらいかかるらしい。
たとえば、夕飯に食べたら、翌日になってから、
ものすごい腹痛、嘔吐、下痢、などが始まるわけ。
この時間差がひとつ目のフェイント。


まあ、症状が出た時点で、普通は、
救急車を呼ぶなりして、病院へ行くわな。
病院では、脱水症状を抑えるとかの処置をする。
すると、一時的に回復の兆しを見せる。
で、峠を越えたか、と思わせたところで、
症状がぶり返して、はい、さようなら。
2、3日でほぼ確実に死んでしまうらしい。
…恐ろしい。要するに最初は消化器症状のみで、ついで肝腎障害が出て死に至るようだ。知らなかったが、自分が診る可能性もなきにしもあらずなので覚えておこう。

さて自然に魅せられるブログ様のところで拾った情報では、
新聞によると、重症の男性は
「いつも食べている「きのこ」と間違えて、
半分づつ食べた」と話したそうです。

とのこと。
さらに別ソースでは、3本を2人で半分ずつ食べたとか。一人で1本半は、立派に致死量です。完全に自己責任で致死量を食べ、そして死に至る…。
女房の命は戻らないが、何が問題だったのか真実を知りたい」とのことだが、その答えは自明と言わざるを得ないんじゃないだろうか。