ICU医師全員退職へ 国循センター 執刀との分業困難  3月1日8時0分配信 産経新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070301-00000017-san-soci

 国立循環器病センター(大阪府吹田市)で、外科系集中治療室(ICU)の専属医師5人全員が、3月末で同時退職することが28日、分かった。同センターは国内で実施された心臓移植の半数を手掛けるなど循環器病治療の国内最高峰で、ICUは心臓血管外科手術後の患者の術後管理・集中治療を受け持ち、診療成績を下支えしてきた。同センターはICU態勢の見直しを検討している。

 同センターによると、ICUには5人の専門医が所属。所属長の医長を含む2人のベテラン医師が辞職を表明したのをきっかけに、指導を仰げなくなる部下の3人の医師も辞職を決めたという。

 ベテラン医師2人は辞職の理由を「心身ともに疲れ切った」と説明しているという。

 同センターのICUが対象とするのは、先天性心疾患や冠動脈・弁疾患、心臓移植、大血管疾患などさまざまな心臓血管外科系の難病患者。成人だけでなく小児も対象とし、外科手術後の患者の最も危険な時期の全身管理や集中治療を24時間態勢で行ってきた。

 ICUの入院病床は20床で、年間1100症例を超える重篤な患者を受け入れ、常に患者の容体の急変に備え、緊張を強いられる環境にあった。

 同センターは、5人に残るよう慰留を続けているが、辞職の決意は固いという。

 このため4月以降は、他部署からICUの専属要員を確保するものの、ICUでの患者の超急性期管理・集中治療は、執刀した外科チームが責任を持って行う態勢にすることを検討している。

 同センター運営局は「特にベテラン2人に代わる人材はおらず、これまでのように執刀チームとICUの分業ができなくなる。しかし、手術件数を減らしたりICUでの管理が不十分になるなど患者に影響を与えるようなことはない」と話している。

ド級インパクトのあるニュースです。

国立循環器病センターといえば、最終的に奈良の”たらい回し”の搬送先となったことは記憶に新しい。
いわば近畿地区の循環器・救急医療を担う本丸で、「ここで駄目ならどこに行っても駄目」とさえ言えそうな重要な病院。そこの心臓部とも言うべきICUを支えていた麻酔科医が、5人一度に辞めるというのだ。

コンビニの切り盛りだって、5人のローテーションだけではとても回るまい。年間1100例以上ということは、日に3人以上の新患(それも恐らくとびきりの重症)が入ってくる計算。激務中の激務の中で燃え尽きてしまったことは想像に難くない。

4月以降は、他部署からICUの専属要員を確保するものの、ICUでの患者の超急性期管理・集中治療は、執刀した外科チームが責任を持って行う態勢にすることを検討している」とあるが、燃え尽きて辞めていくほどの過酷な職場なのに、他部署からのかき集め、外科の兼任などで十分回せるとはとても思えない。
「新たに人員を雇う」という話が出てこないのは考えていないのか、それとも人員確保が難しいことが分かっているからなのか。いずれにしても末期的といえるだろう。

病院側の、「手術件数を減らしたりICUでの管理が不十分になるなど患者に影響を与えるようなことはない」というコメントも酷いものだ。全く影響を与えないというなら、これまでの5人の働きはいったい何だったのか?
不安を煽らないための対外的コメントだろうとは思うが、辞めていく医師たちにもう少し敬意を払ったコメントは出せないものか。