過重労働の集約化

集約化の弊害の可能性について書いたばかりですが、この記事。
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hyogo/archive/news/2007/02/25/20070225ddlk28100011000c.html

周産期医療:病床不足や超過勤務、産婦人科「集約」で深刻−−県医師会検討会 /兵庫
 県医師会(西村亮一会長)は24日、出産前後の母体・胎児、新生児にかかわる「周産期医療」の現状を考える事例検討会を県医師会館(神戸市中央区)で開いた。県内の産婦人科医、小児科医、助産師、看護師が医療現場の課題をそれぞれ報告。医師不足などから相次いだ病院産婦人科の閉鎖に伴って、医療スタッフなどが「集約化」された病院では、病床不足や超過勤務など、周産期医療を支える側の問題が深刻化していると訴えた。

 周産期医療に関する検討会は県医師会が毎年開催。今回は「周産期医療を支える人びとの諸問題」をテーマに出席した医療関係者ら約150人とともに情報交換した。

 県内では04年4月から2年間で診療科52科が廃止、休診になり、産婦人科(産科を含む)、小児科がうち21科を占めた。

 周辺施設が産婦人科診療を閉鎖して、2年間で分〓(ぶんべん)数、手術数が大幅に増えた加古川市民病院(加古川市)は、対策として進められている産婦人科医療施設の集約化について報告した。

 人口約120万人の東播磨地域では2年間で5病院が産婦人科を閉鎖。同病院では02〜06年度の間に分〓数が4割増えたため、医師の増員、診察室の増設などで対応している。しかし、▽満床による母体の受け入れや分〓の制限▽手術待ち日数の長期化▽スタッフの疲労−−といった問題は「すべて集約化により生じている」と指摘した。

 出席者からの「リスクを分配する工夫が必要ではないか」という質問に対して、発表担当者が「分配する施設がない」と反論する場面もあった

 助産師の立場からは、母体や新生児の容態が急変した場合に備え、他病院との連携強化を提言。また、お産で助産師の能力と技術をより生かすため、病院に「助産科」を設けた場合について、出産適齢期の女性にアンケートしたところ、8割が受診に関心を示したという報告もあった。【津島史人】

〔神戸版〕

毎日新聞 2007年2月25日

前回書きそびれていたのですが(と書くと後出しジャンケン感満載ですが本当です(笑))、集約化したといっても所詮現状は「足りないパイ」の分配の話。集約化された施設とて、十分なキャパシティがあるわけではありません。
現場の労力という点を抜きにすれば中小の医療施設を多く残しておいた方が、全体として患者を受け入れるキャパシティは大きかったはずです。
しかし中小施設からの撤退の流れを決定付けたのは、あの大野病院事件でした。一般的な地方病院の体制による治療を否定したともいえる逮捕は、全ての医師を震撼させるものでした。ちなみに2/23に2回目の公判が開かれていますが、検察側の証人として法廷に立った医師もK先生の処置の正しさを裏付ける証言をしているようです。
参考:ある産婦人科医のひとりごと

そこを集約化してしまったのですから、リスクの分配などできようはずもありません。こうなる流れは、ちょっと考えれば分かることだったはずなのですが。
もっとも嘆いていても始まりませんので、過渡期において足りないマンパワーをいかに有効活用させていくか考える必要があります。
宮崎県では県内をブロック化し、その中で開業医を1次施設、総合病院を2次施設、大病院を3次として、それぞれを30分から1時間で移動できる体制を整えるという「地域分散型」で上手く機能させているようです。ただ、これとて「魔法」や「打ち出の小槌」ではありません。この体勢下で個々の施設に負担が掛かっていないか心配ではありますし、体制作りに必要な医師数がどうなのかは判りません。もちろん全ての地域に当てはめて上手くいくとは限らずこれは一成功例に過ぎませんが、行政と医療側が一体となって体勢作りをする努力が求められそうです。

(参考:asahi.com