またお前か

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070223ddm003100119000c.html
心臓手術:件数増で死亡率低下 格差2倍以上−−病院・医師別調査

まずは記事のコピペ。
 患者の重症度を考慮して分析しても、心臓バイパス手術の死亡率は病院の年間手術数や、外科医個人の手術数が増えるほど下がることが、「日本心臓血管外科手術データベース機構」(151病院加入)の調査で分かった。死亡率の格差は2倍以上に達しており、機構の代表幹事の高本眞一・東京大教授は「患者のためと医師教育のため、手術する病院を集約すべきだ」と訴えている。

 心臓手術の死亡率と手術件数については「多いほどよい」との分析はあったが患者の重症度は考慮されておらず「成績が良い病院は軽い患者が多い」など批判があった。

 心臓手術をする病院で作る同機構が、03年から05年に機構に加入しており年平均手術数が16件以上だった36病院と、外科医計200人、患者計4581人を対象に分析。重症患者が亡くなれば死亡率を低く、軽症なら高く算出する統計的手法を使い、病院別、医師別の患者死亡率を、患者の重症度が平均的だった場合の率に換算した。

 換算後の死亡率が最低だったのは、手術件数が最も多いグループの病院(年51件以上)で、件数の多い医師(年16件以上)が手術した場合で1.46%。最高は最も少ないグループの病院(年16〜30件)で医師も15件以下の3.47%だった。機構に入る病院は熱心で死亡率は低めとみられ、全国的には格差はさらに大きいと考えられる。病院名と医師名は非公表だ。

 高本教授は「個人で年15件以下は大半が若手医師だが51件以上の病院で手術すれば死亡率は1.7%と低かった」と話し病院の集約化を訴える。

 日本胸部外科学会の調査では、心臓手術をする病院は全国で500余りで、約4割は手術数が年49件以下。【高木昭午】



死亡率が1.46%と3.47%って・・・成功率でいえば98.54%と96.53%。その差、わずかに2.1%。
…はて、ほとんど変わりないんじゃない?これって、統計学的に有意差は出てるんだろうか?
実質的にはほとんど差のないものに対して針小棒大に書き立てるマスコミには、大きな問題があると思う。
・・・というか、毎日新聞!!またお前か!!



まあ数が多いところは死亡率が少ない、っていうのは他でも研究結果が出ていて、
この結果自体は別に目新しいものではない。
でも正直、こんな誤差程度(と敢えて言いますが)の差ぐらいは許してほしいと
思わなくもない。この差を許容しないことで、もっと深刻な影響が出る可能性がある。



施設により設備や医師の腕のレベルが多少なりとも異なってしまうのはけだし
当たり前のこと。医療は工業製品ではないのだから、「どこでも均一」というのは
おのずと幻想に過ぎない。
もちろん技術・設備が最高レベルでなくとも、「救えなくてもいいや」と
治療を試みたりするはずはない。どこの医療機関だって誰に言われなくとも、
その差を縮めるべく持てる力量・設備などでできる限りのことはやっているはずだ。



それでもトップの成績に合わせなければ駄目、症例の少ない施設での手術は
駄目ということになれば、技術の確保・伝達に支障が出ることは容易に予想できる。



みんな受けられる「そこそこいい治療」と、一握りしか受けられない「トップクラスの治療」。
その「トップクラスの医療」を安易に求めて数字にこだわり集約化させることは、地方医療の
ますますの崩壊、医療の格差化を進めかねないだろう。
また、「きれいなデータ」にこだわり高リスク患者を他の病院に転送するという、本末転倒な事態も起こる。





微妙に違うデータだが、冠動脈バイパス術についてのほとんど同じような調査結果について
触れたブログがあったのでリンクしておきます。
http://blog.m3.com/Fight/20060922/1