忘れてはならない放射能の恐ろしさ

いつも楽しく拝見させて頂いている、ssd先生のところでも触れられているネタですが。

長崎県立島原病院:CTスキャン、破裂音 患者腹部撮影中、煙も----けがなし
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

長崎県立島原病院(島原市)で先月、患者の腹部の断層撮影中にCTスキャン用の医療機器が突然、破裂音などがして故障していたことが分かった。病院などによると、機器の中にいた患者にけがはなかったが、精神的ショックから不眠や倦怠(けんたい)感を訴えている。同病院と製造元の「東芝メディカルシステムズ」(本社・栃木県)が19日会見し、事実関係を発表する。厚生労働省によると、CTの使用中の事故は初めて。

病院によると、事故があったのは6月29日午前11時15分ごろ。患者が腹部撮影のため、ドラム缶様の機器内に横たわっていたところ、破裂音がして煙が出たという。立ち会っていた放射線技師がすぐに電源を切り、患者を機器内から出したが、今月3日に同病院で受診した際、精神的な不調を訴えた。同病院を管理する県病院局経営管理課は「患者への放射能の被ばくはないと、病院から聞いている」と説明している。

故障した機器は「X線高圧発生装置ユニット」と呼ばれ、同病院では02年から使用している。事故後、メーカーの担当者が破損個所の部品を交換、翌日から使用を再開している。

CTは人体にさまざまな角度からエックス線をあて、輪切りにした断面画像をコンピューター上に映し出す装置。【山崎太郎】

◇医療機器不具合、近年は増加傾向

医療機器の事故や不具合は年間100件以下にとどまっていたが、高度な医療機器の普及に伴って近年は増加傾向を示している。厚労省によると、7、8年前から年間5000-1万5000件の報告が上がっているという。

この中でも、CTによる事故や不具合はほとんど起きておらず、医療機器などの事故情報を収集している厚労省所管の独立行政法人医薬品医療機器総合機構(東京都千代田区) によると、CTの不具合は統計を始めた04年4月以来9件が報告されているが、撮影画像が保存されていなかったなどの故障が大半。今回のような部品の破裂などの重大事故に至ったケースは報告例がないという。

厚労省医薬食品局安全対策課も「医療機器の破裂というのは聞いたことがない」と衝撃を受けている。

さて。
こんな辺鄙なブログに来られる方はおそらくご承知の方が多いと思うが、野暮を承知で解説。
放射線”とはX線ガンマ線などといった、電離性を有する高いエネルギーを持った電磁波や粒子線(ビーム)のことを指す。それに対して”放射能”とは、放射線を出す能力そのもののことを指す。「放射線を出す」「放射線に被曝する」という表現は正しくても、「放射能を出す」「放射能に被曝する」などといった表現が正しくないことはご理解頂けるだろうか。

X線CTは放射線の一種であるX線を電気的に発生させるものであって、決してコバルトやらラジウムやらウランやらプルトニウムやら…といった放射性物質を内部に設置しているものではない。百歩譲れば、CT装置が故障して異常な量のX線を出す可能性が絶対にないとは言えない…が、X線は電気で発生させているので電源を落とせばそこで終了。

記事には

同病院を管理する県病院局経営管理課は「患者への放射能の被ばくはないと、病院から聞いている」と説明している。

とあるが、病院の管理者が放射線放射能との区別がつかないとはちょっと考えにくい。少なくとも、何も訊かれないのに「放射能」についてどうこう説明する可能性は非常に低いんじゃないだろうか。
以下はまったくの推測に過ぎないのだが、この記者が病院側に「放射能の被曝はないんですかっ!」と食い下がった可能性は決して低くないと思う。そうでなければ説明がつき辛いというぐらい、この文脈での”放射能”という言葉の用いられ方は突拍子もないのだ。
いまだにX線写真やCTのあと「他人に放射能が伝染ったりしませんか」などと訊いてくる患者さんがいるくらい、”放射能”という言葉は「何かヤバいもの」という印象が抜けないようだ。ただ記者が万一そんな認識であったり、まして記事にしてしまったりしては、記者失格と言わざるを得ないだろう。
真実は闇の中だが、まあ「毎日新聞社」ということで。
…と、痛くもないかもしれない腹を探られてしまう毎日新聞の記者の方々が少々気の毒にさえなってしまう今日この頃。